『夢の死骸』
花の下には、死体が埋まっているという。
緩やかな悲哀を帯びた、桜。
強い感情に燃える、彼岸花。
紫陽花の下には
どんな死体が埋まっているのだろう。
紫 青 水色
淡い花の色は、春の夢色。
紫陽花の下には、きっと
夢見がちな春の私が、眠っている。
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『私の黄色』
お日様。ヒマワリ。可愛いひよこ。
元気で明るい、黄色が大好き。
だけど
私のことを「眩しい太陽みたいだ」
と例えた彼は
日焼けが嫌いな、人だったから。
明日からは優しい月色に、
方向転換する予定。
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『本日、晴れのち隕石』
いつ終わってしまっても
悔いの残らないように生きていたら、
いつ終わってしまっても
いいような人生になってしまった。
地球最後の日。
後悔が無いことが、ちょっと残念。
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『恋する瞳』
目を見れば考えが分かるなんて
そんなの、絶対に嘘。
何度も試したけれど
いつも頭の中が真っ白になって
何も考えられなくなるだけだもの。
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『通行人Aは蚊帳の外』
通りすがりの家から
漏れ聞こえてきたサスペンスドラマのセリフ。
私は通行人Aだから
加害者も被害者も
分からない。
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『夏恋レモン』
レモン味は、
甘くて酸っぱい、キュンとする味。
キャンディーもジュースも
かき氷のシロップも
みんなみんな、特別な恋の味がする。
本物のレモンは、要らないの。
好きなのは無果汁の、レモン味。
***
花をください。
何気なく立ち寄った野原で、一番綺麗な野花を。
こっそり盗むように持ち帰って、届けて下さい。
花をください。
仕事帰りの疲れきったその足で、リボンを結んだ赤いバラを。
通りすがりの女子高生に笑われながら、届けて下さい。
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『デニムが似合わない人』
あの人は、デニムが似合わない人。
いつもパリッとしたYシャツを着て
綿のパンツを履いていた。
どんなに暑い日も、二人で遊びに行った時も
きっちり。カッチリ。
あの人は、カジュアルになれない、人だった。
あの人の、フォーマルを崩せない、私だった。
***
たくさんの嘘をついて
たくさんの嘘をつかれて
信じることの大切さを知った。
例え嘘でも許せるということが
その人を、信じるということ。
***
私と話したいなら
フリーダイヤルを取得してよ。
***
『匿名商店街』
ここは、匿名商店街。
誰も彼も、隠して隠さず、生きている。
ペンネーム。ラジオネーム。ハンドルネーム。
思い付きでも渾身の一作でも
それはその人の、今までの人生。
他人に付けられた名前より
ずっとずっと、その人に近しいもの。
***
名前が分からない。素性が知れない。
知らない人が、そこに居る。
殺し屋かもしれない。
スパイかもしれない。
どこか遠い国の、王族かもしれない。
そんな、かもしれない族が、私以外。
全世界の、殆どの人。
あ、でも
実は会ったことが、あるかもしれない。
***
『いつも頑張り屋な私へ』
熱はありません。頭もお腹も痛くありません。
家族はみんな健在です。
ただ、魔が差したので、
お休みを頂きたく思います。
ごめんね。
また明日から、よろしくね。
***
独りぼっちだと気付けるなら、
あなたは孤独ではない。
ただの寂しがり屋に、
私の生き方を真似されたくないの。
***
感情が先行するとき。
そこに主語はない。
嬉しい。楽しい。悲しい。寂しい。
わたしが、いない。
***
『青い星』
この機械仕掛けの青い星では
謎も不思議も、絶滅危惧。
今日も明日も明後日も
わたしもあなたもあの人も
全部が全部、予定調和の完結型。
明日、宇宙人が来たらいいのに。
だったら、素敵なのに。
***
火星の国の王子さま。
8本足で、私に花束を下さいな。
***
空想と妄想の違い。
切り離された絵空事と、
切り離せない、期待。
人に言えること、言えないこと。
夢見ることと
夢に魅せられること。
***
『最後の一瞬』
珍しい模様の蝶々が、キラッと光った。
緑色に香る風が、頬を撫でた。
熟れて落ちた果実が、靴裏で弾けた。
今まで百も千も繰り返してきたような
何気ない出来事。
けれどその一つ一つが唯一無二で、
最初で最後の、一瞬。
***
わたしのこと。
例えばあたしと言ってみたり、僕と言ってみたりすると
とたんに訳がわからなくなる。
***
風にも太陽にも負けないよ。
でも、あなたが「似合わない」と言えば
わたしはマントを脱ぐでしょうね。
***
『大人ルール』
ブランコに乗ってはいけない。
滑り台を滑ってはいけない。
砂場でトンネルを作ってはいけない。
誰に言われたわけでもないのに、
いつの間にか増えていた禁止事項。
大人になるって、
出来ないことが増えること。
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箸が転げても笑っていたあの頃。
今は、面白くなくても笑えるようになったけれど、
箸が躍り出したって笑える気がしないの。
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『Birthday』
今日まで知らなかった私。
あなたが気付かせてくれた、新しい私。
お誕生日おめでとう。
生まれてきてくれて、ありがとう。
昨日までよりももっとずっと、
私は私が好きになる。
***
私がナルシストなのは、あなたの所為。
私がナルシストなのは、 あなたのおかげ。
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『昼の蛾』
眩しさに焼かれたこの目には
もう、光しか見えない。
***
好きは語りたいけれど、こだわりは語りたくない。
説明が面倒だし、意見も感想も求めていない。
私の中で完成された独自理論だからだ。
そして年々こだわりが増えた結果、
「よく分からない人だよね」って言われる。
けれど、私は私をよく知ってるの。
***
『降車券』
降りる為に乗っていた。けれど。
タイミングを逃した私は
不足賃が払えず、降りられない。
ガタン、ゴトン。
明日も明後日も、100年後も、
レールの上を揺られ続ける。
どこまでも行ける。
どこへもたどり着けない。
世界の、果てまで。
***
たとえ話が嫌いなのは、今が幸せだから。
たとえ話が苦手なのは、未来に希望を抱けないから。
もしも。
***
自分の背中ばかり
追いかけて生きてきた。
地球が、丸いから。