Act2.「トランプ王城」



 明日の晩、城で開かれるというパーティー。名目は“春の祝賀会”である。雪の異変明けに永白が準備していた春祭りと同じく、人々の認識を冬から春に切り替えることで、未だ続く寒冷を終わらせようとしているのだ。

(ぶ、舞踏会……)
 ジャックの口にした舞踏会という言葉に、絵画か映画でしか見たことのない貴族社会の格式高いイメージを抱いたは尻込みした。ダンスも出来ないマナーもなっていない自分が出たところで、恥を曝す未来しか浮かばなかったのだ。不安そうな顔のを、ジャックが笑う。今回のパーティーは城関係者から招待されれば誰でも参加できるカジュアルなもので、身構える必要は無い。ダンスもあくまで余興の一つであり、必ずしも踊る必要はないとのことだ。パーティーには虚無化の対応に疲労する兵士達を労い士気を上げる目的もあるらしく、トランプ兵や騎士団員も交替で参加するらしい。開かれた雰囲気を感じ取り、は少しだけ安心した。

「でも、何でわたしが?」
「人が集まるところには情報も集まるからな。行って無駄にはならないと思うぜ? それにお前、永白で春祭りの準備を羨ましそうに見てただろ。ずっと気を張っていても碌なことにならない。気晴らしも大事だ。な?」
 同意を促すように、に向かい小さく頷きかけるジャック。彼の言葉はの中の“行けない要素”を潰していく。は、ジャックがわざざわざ自分を誘うにはそれだけの意図があるのだろう……と裏を読むが、パーティーに対して純粋な興味もあるし、この国が虚無化についてどう考えているのかを知ることができる機会かもしれないと思った。――トランプ王国でも、永白でも、虚無化に対して切羽詰まったものを感じることがない。本当に世界が危機に瀕しているのか怪しく感じられる程、部外者のでさえ違和感を感じる悠長さ。国の中心に居る人々を見れば、その実態が分かるかもしれない。

 が「行きたい」と言うと、黙って聞いていた常盤は渋い顔をしつつ、に付き添おうとする。それを止めたのはジャックだった。

「おっと。お前には対策本部から招集がかかってる。それに賑やかな場は苦手だろ? は俺に任せて、静かで厳めしい連中と仕事に励んでくれ」
「対策本部って、なに?」
「虚無化の、だ。何も知らないのか?」
 ジャックは少し驚いた声で、しかしどこか予想していたような顔をした。は初めて聞いたその存在に目を丸くして、常盤を見る。虚無化の対策本部……世界レベルの問題に対応するための機構が発足されるのは当然といえば当然だ。しかしこれまで一度もそんな話をされたことはない。は白ウサギである自分はそこに協力すべきなのではないかと思い、パーティーではなくそちらに付いて行こうとしたが、常盤ににべもなく断られた。恐らく自分を関わらせたくないような場所なのだろう、とは理解する。その理由は気になるが素直に訊いても教えては貰え無さそうだ……とりあえずはパーティーへ行こう、と切り替えた。


 翌日の夕方、は数日ぶりに“王都サーティーンス”にある城の敷地を踏む。入口までは常盤と来ていたが、迎えに来たジャックと入れ替わるように、彼は一足先に城の方へと向かって行った。対策本部の拠点はパーティー会場とはまた別の建物にあるらしい。本当は昨晩の内に急いで向かうべきだったところ、ギリギリまでの傍に居た常盤に、ジャックは「過保護だな」と呆れる。はやんわり苦笑した。

「その格好、素敵だね」
 はいつもの団服とは違うジャックを遠慮がちに眺める。光沢のある黒のタキシードだ。紋織絹のアスコットタイは銀の刺繍に煌めいており、こなれた感じを醸し出している。彼のいかにもパーティー慣れしていそうな姿に、は途端に不安になった。ドレスは城の衣装部屋で借りることが出来るということで、今のは普段通りの服にコートを羽織っただけだが……ドレスを着たところで彼の隣に並び立てる気がしない。

「なんだ? 惚れ直したか?」
「ウン。ねえ、わたし本当にパーティーのマナーとか分からないけど大丈夫かな?」
「適当だな……。マナーなんて見よう見真似でやってればそれらしく見えるだろ」
「適当だね……」

 パーティーまではまだ大分時間がある。はジャックに案内され、敷地内をのんびり散策しながら城に向かった。は以前、セブンス領から戻って来た際に一度だけここに来たことがある。しかしあれは外に近い場所にあるカフェで、これほど城に近付いたのは初めてだった。

 背の高い柵に囲まれた敷地内。最初の門を通るとレンガの道が続き、飲食店などが連なっている。テーマパークの中に作られた小さな町みたいだ。行き交う人々はトランプ兵だったり、いかにもなメイドだったり、外から来た商人だったりと様々で、が混ざっていても悪目立ちすることは無かった。
 町を抜けると、左右には広い庭園が広がっている。その奥には緑の生垣に囲まれ中が見えない巨大迷路。は挑戦してみたくなったが、ジャックの「たまに戻って来ない奴がいる」という言葉に、時間に余裕がある時にしようと思った。

 石橋を渡り巨大な城門をくぐると……物語に出てきそうな城が視界の端を超えて広がっていて、は感激で心が痺れた。王の住居、政務を行う執務室、食堂や図書館、今晩パーティーが行われる会場……ジャックが説明を早々に諦める程の数多のものが、そこには詰まっている。左端には訓練場を併設した兵士達の寄宿舎、右端には使用人が寝泊まりする寄宿舎が独立していた。

 城の一階に設えられた受付には、紳士や貴婦人達がごった返している。城の関係者だけでなく近隣の領の貴族も呼ばれているのだ。誰も彼も着飾り洗練されており、は再び及び腰になる。ジャックはの肩をポンと叩いた。

「とりあえず着替えて来いよ。着替えればちゃんと気分も乗ってくるってもんだ。ドレス、選んでやろうか?」
「いや、自分で……」

「久しぶりね、ジャック」
 の言葉を、知らない女の声が遮った。振り返ったが見たのは――目を瞠るような美女である。

 彫りの深い顔立ち。白い肌に浮き上がる、真っ赤なルージュの厚い唇。起伏の激しい体の線を強調するシンプルな黒のドレス。艶めかしく生々しい女だ。年齢は掴みにくいが老いは一切感じさせない。ただ熟した色気が溢れ出ている。
 女は腰まで伸びた波打つ黒髪を揺らし、達の方へ歩み寄って来た。高いヒールがカツン、カツンと良い音を鳴らした。知り合い? と隣のジャックを見上げようとしたの顎を、女の指がそっと捕らえる。

「ふうん。あなた、女の好みが随分変わったのね」
「お、おい黒バラ……」
 女の方向に固定されているにはジャックの表情が分からないが、彼の声はひどく狼狽えていた。黒バラとは目の前の女の愛称か何かだろうか? 何も分からないにも、分かることが一つだけある。それは、どうやらこの美女に馬鹿にされているらしいということ。女の舐め回すような視線が好意的なものとはとても思えない。は下手に抵抗するのも癪で、どうしたものかとじっと見つめ返す。

「あらあら、野菊みたいに可愛らしい子だこと。男って素朴さを純粋さと解釈しがちよね」
 女の呼吸と共に甘く鋭い芳香がする。強い薔薇の香りには僅かに目を細めた。時折わざとらしく唇を舐めるその仕草は、扇情的で、些か品が無く思える。官能的という概念が服を着て歩いているみたいな女だ――との中に否定的な感情が生まれるのも仕方ないだろう。女が不躾に敵意を向けてくるのだから。

「まあ、華美な花ばかりだと飽きるものね。生け花でもバランスが大切だもの」
 女はようやくから手を放し、肩にかかる髪を払い宙に躍らせた。ベルベッド生地のドレスは遠目には黒一色に見えるが、近くでは不思議な色に輝く。彼女はまさに“華美な花”だ。

 女の目はに向いているが、その言葉はジャックに向けられている。彼女の口から直接的な言葉は無く、ジャックは不思議なくらい何も言わないが、は薄っすらと二人の関係を察した。それが現在進行形か過去のものかはさておき、恐らくは色めいた話に違いない。そしてどうやら、女はのことを……ジャックの新しい恋人と勘違いしているらしい。

(とんだ勘違いに巻き込まれちゃったな)
 は否定すべきか否か悩む。ジャックが何も言わないなら、そう言うことにしておいて欲しいのかもしれない。だとしたら否定は不義理な気がした。(彼に対してそんな義理があるかは別として)
 無言で女を眺めているに、女が馬鹿にしたように笑う。
 
「あなた、本当に花みたいね。何もお話しできないのかしら?」
「――えっ。わたしに話を? 気付きませんでした。何せ自己紹介もまだですからね」
 は女が嫌いそうな素朴で純粋な笑みを浮かべる。女は驚き一瞬だけ美しい笑顔を引っ込めたが、その唇はすぐにまた完璧な弧を描いた。

「これは大変失礼いたしました。私は黒バラと申します。城で花人(かじん)を勤めておりますわ。あの受付にある花や、パーティー会場の装花も私が手がけましたのよ」
 は女の促すような視線の先を見る。受付にある大きな生け花は、派手な花がふんだんに使われた豪華なものだが、桜色や薄黄色など淡い色で統一されており品がある。何も言わずとも春を祝うコンセプトを感じられる作品だった。花人とはフラワーアーティストのことなのだろう。

「わたしはと申します。……受付のお花、すごく可愛らしくて良いですね。まるで春が優しく微笑んでいるみたい。わたし、好きです」
 は、作り手と作品は必ずしも一致しないのだと杜撰な嫌味を言おうか悩んだが、止めておいた。良いものは良いと素直に賞賛すべきだ。黒バラはただ褒められ、落ち着かない様子で目を逸らす。そして「衣装部屋に行かれるなら急いだ方がよろしいですわよ。人気のドレスはすぐ無くなってしまいますから」と言い残し、会場の中に戻っていった。後ろ姿、一挙一動の全てが婀娜っぽい。周りの男達の視線が吸い寄せられている。

 は、すっかり存在感を薄めていた男を見た。黒バラの背中を追っていたその目はに気付き、決まりが悪そうにする。

「……
「ねえ、黒バラさんって、名前なの?」
 ジャックの恋人だと誤解されたところで、今後も彼女と関わる訳でもないのだから大した問題はない。ただ一時、見知らぬ美女に敵視され嫌味を言われただけのこと。は話を変えることにした。ジャックはのさっぱりした反応に安堵し、その問いに答える。

 ――不思議の国では黒バラをはじめ、百合、すみれなど“花の名前を冠する女性”が居る。それはトランプ兵と同様に、唯一無二ではないが特殊なロールネームだ。特にバラ族の女性は見目麗しい者が多く、定期的に美しさを競うバラの品評会――所謂『美人コンテスト』のようなものが開催されている。そこで頂点に輝いた者は、唯一無二のバラの名を語ることが出来るという。
 先程の黒バラは、歴代最高数の金賞を受賞しているらしい。だから黒バラにも別の名前はあるが、誰も彼も……そして誰より彼女自身が“黒バラ”の名で呼ばれることを望んでいる。はジャックに彼女の本名を訊いてみたが濁されてしまった。
 他の色のバラ達も、庭師、給仕、女兵士など様々な役職で城に勤めているらしい。

(そういえば、さっき赤い髪の綺麗なメイドさんを数人見かけたな……赤バラさん達、ってことかな?)
「とにかく、巻き込んで悪かったな」
「貸し一つね。じゃあ、そろそろ着替えに行ってきます」
「ああ。そこの君、案内を頼まれてくれるか?」
 ジャックに声を掛けられた女の使用人が緊張気味にやってきて、を丁重に衣装部屋へ案内する。使用人は騎士団長の連れが何者であるか興味があるらしく、時折探るような視線をに向けたが、は気付かないふりをした。

 衣装部屋は、近付けばすぐにその部屋だろうと分かった。扉が閉ざされているにも関わらず、廊下にまで華やかな声が響いている。やかましいというよりは賑やかなそれに、もつられて心を湧かせた。しかし……ドレスへの歓声というよりは、アイドルに対する黄色い悲鳴に近い。そっと扉を開けて中を覗くと、中からは白粉や香水の良い匂いがした。ハンガーラックに掛けられた色とりどりのドレス。男子禁制の雰囲気があるその部屋の真ん中では、女達が一人の男を囲っている。

「グリフィス様! 次は私のドレスを選んでください!」
「ちょっと、あたくしが先に待っていたのよ! 順番を守りなさいよ!」
 キャーキャーと騒がしい女達の中心で、ボーっと宙を眺めている男。女達の頭からちょうど顔が突き出る位の背丈で、茶褐色に白の混じった長い髪を高い位置で一つに括っている。囲みの隙間から見え隠れする衣服は引き摺るほどに長い。神聖で、どこか浮世離れした雰囲気の男だった。その一番の要因は……背中から生えている大きな翼である。力強い濃褐色の両翼が女達の間から突き出ていた。

(あの人は一体……)
「グリフィス様が人前に出られるなんて、珍しいですね」
 案内役の女がぽつりと言う。「どんな方なんですか?」とが問うと、女は吃驚した様子を見せた。

「彼こそトランプ王国の宝! 百発百中の“予言者グリフォン”様です! 普段は人の居ない静かな場所を好まれるのですが、今日はどういう風の吹き回しなのでしょう?」
 グリフォンとは、獅子の胴体に鷲の頭と翼を持つ空想上の生物の筈だ。そしてまた『不思議の国のアリス』に出てくる登場キャラクターでもある。はグリフォンというのがアリスネームで、彼の個人名がグリフィスというのだろうと理解した。

「予言者? ……女性人気が凄まじいですね」
「ええ、まあ、あの方の神秘的な雰囲気に惹かれる方は多いです。でもやっぱり、皆さんは彼の予言がお目当てじゃないですかね。彼にぴったりのドレスを選んで貰えれば、パーティーの主役も間違いなしですから」
「なるほど」
 達の目線の先で、グリフィスは気まぐれにラックからドレスを取り、近くの女に渡す。歓声が上がる。は彼女達を避けて部屋の奥に行こうとした。グリフィスを囲む会に参加せず遠巻きに見ている人達が衣装部屋係なのだろう。彼女達にドレスの借り方や着方を訊きに行かなければならない。……しかし障害物は生き物で、じっとしていてはくれなかった。はグリフィスにドレスを選んでもらい狂喜乱舞する少女にぶつかり、輪の中に押しやられてしまう。
 グリフィスの何を考えているか分からないぼーっとした顔が、を見た。「あ」と高くも低くもない、見た目通りの声が漏れる。

「あなたは、これ」
「えっ」
 グリフィスの腕に付けられた沢山の装飾品が、シャラシャラと澄んだ音を立てた。彼はの手に一着のドレスを押し付けると、小さく何度か頷く。そしてが何か言う暇もなく、また別の女に捕まってしまった。はどうにか輪から逃れ、案内役に困った顔を向けるが、彼女は「ラッキーですね」と言うだけだ。本当は自分でドレスを選びたかっただが、権威者に選んでもらったと喜んでおくべきなのかもしれない。それでも他のドレスに目移りしていると、衣裳部屋係に捕まり丁寧にドレッサールームに押し入れられた。



 *



 パーティー会場の手前、ウェルカムスペース。ちょっとしたドリンクや軽食が供されるそこは、歓談する者やパートナーと待ち合わせる者で賑わっていた。ジャックは何人かと最低限の挨拶を交わした後、あまり人と話をする気になれず壁際に避難する。スペースに飾られた花々を見て、久しぶりに会った女の顔を思い出し、苦々しい表情を浮かべた。

 ジャックと黒バラとは、二年前に男女の交際関係にあった。互いに城を仕事場とする身であり、顔を合わせる事も少なくなかった二人。ジャックは他の男達同様に、彼女のその見目麗しさに惹かれた。男達のアピールをのらりくらりと躱してきた黒バラがジャックに振り向いたのは、彼の何かが彼女のお眼鏡にかなったのか、ただの気まぐれか。男女の仲など何か少しでもタイミングが合えば始まる、それだけだったのかもしれない。
 付き合ってみると、黒バラは派手な外見通り気が強いが、思いのほか家庭的で可愛らしい一面もある魅力的な女性だった。些細な事で言い合いをすることもあったが、それなりに上手く、楽しく過ごしていた。
 
 だがその関係も長くは続かず、たったの三月程で終わった。終わりを告げたのはジャックだ。黒バラには花人の他に、もう一つの顔がある。彼女は“王のバラ”なのだ。王の命に従ってあらゆる相手の懐に忍び込み、美貌を活かし情報を収集する。時には自らを犠牲にすることもあったが、王への敬愛が彼女にそれを厭わせなかった。王の愛人だと噂される彼女をジャックは信用しきれず、また自らが崇敬する王に醜い嫉妬を抱くことから逃げたのである。
 黒バラにも何か思うところはあったのか、別れを切り出された彼女は「そう」と小さく呟いただけ。ジャックに追い縋るようなことは無かった。それで、二人の関係は終わった。

 ジャックはもう未練など無いと思っているが、それでも顔を合わせると……彼女から話しかけられると、期待か後悔か何かしらの念が浮かぶ。ジャックは深い溜息を吐いた。

「真っ黒な壁の花さん。パーティーに溜息は似合いませんよ」
 聞き慣れた少女の、芝居がかった声。ジャックが顔を上げると、そこにはドレス姿ではにかむが居た。高い位置でまとめた髪と華やかな化粧が新鮮で、ジャックは妙な緊張を感じる。ドレスはのイメージより随分と大人びたものだった。肩と胸元を覆う黒のレース。きゅっと締まった腰から広がるボリュームのある裾。艶めく黒地に部分的に入った鮮やかなブルーは、発光しているみたいな不思議な色だった。ジャックは一瞬ハッとして、その後、何とも言えない顔する。そのドレスが“闇夜に咲く青い花”に見えたからだ。

「……どういう趣旨でそのドレスにしたんだ?」
「あ、花じゃないよ、このドレスは蝶がモチーフなんだって。ほらここ見て」
 も鏡の前で同じことを思ったため、彼の反応は予想出来ていた。すぐに否定し、衣装部屋係から聞いたばかりのデザインの説明をする。ジャックはまじまじドレスを見た。確かに青い部分には翅脈のような模様がある。

「ね? 蝶でしょ?」
「ああ、良かった。これで安心して見惚れられるな」
「はは、ご冗談を」
「いや、本気だよ。さ、お手をどうぞ」
ジャックが恭しくお辞儀をする。がどうするのが正解か迷っていると、ジャックは小さく「手を」を急かした。は言われるままおずおず手を差し出す。ジャックはその手を取り、軽く回して甲を上に向けさせると、そっと口を近付けた。

(ちょっ……!)
 それはポーズだけで、触れることなく離れる。は赤い顔で眉を顰めた。油断した。このままでは玩具にされてしまう。ニヤニヤ顔の男に背を向け、気を落ち着かせた。 inserted by FC2 system