『夏色サンシャイン』
ラムネ色って何色?
ソーダ味って何味?
空よりも海よりも、あおい色。
しゅわしゅわ弾ける、あまい味。
合成着色料色。人工甘味料味かもしれない。
けれど
氷漬けの頭では、キンキン痛んで分からない。
七色の舌は、0%のフルーツ味に麻痺してる。
ああ、夏。
全部嘘みたいに、眩しい!
***
『恋の掟』
あなたに恋をしてから
きっと私、誰より可愛い。
強くなくてもいい。泣いてもいい。
恋は、女の子の免罪符。
だから
あなたを好きな、私が好き。
恋の掟に囚われて
愛のルールに縛られて
今日も伝えるよ
大好き。アイラブユー。我愛尓。
***
『真昼の幽霊』
幽かに香る、夏の香。
20℃の吐息と、21gの気配は
お盆の置き土産。
昼間の幽霊は、まるで生きているみたいでしょう。
でも、勘違いしないでね。
ここにいるのは“あなたの心残り”
私が私を忘れたのだから
あなたも私を忘れてください。
***
胡蝶の夢も潰えたから
蛹の中で眠りましょう。
暗く温い静かな場所で
世界の悲鳴を遠くに聴いて
朧なものに、還りましょう。
***
『少女侵略』
侵略は内側から。
いつだって、攻めながら守ってる。
壊すために作ってる。
双子の殺意。鏡の慈愛。
生かすも殺すも、わたし次第。
ああ、この不器用貧乏な独立国家を
あなたは「思春期」の一言で
片付けようとしているのね。
***
『夏残り』
終わらせたはずの夏が
ジリジリくすぶっている。
火種は
忘れたままやり過ごした、あの日の宿題。
私だけが覚えていて
私だけが許せない。
君に教えてと言いたかった
君に教えてと言えなかった
あの夏。
be動詞も一次関数も、
苦手なまま大人になった。
全部、君の所為。
***
『着の身着家出ガール』
着の身着のまま、逃げ込んだ公園。
ここから見えるマイ・集合住宅は
お弁当箱みたい。
宿題、お使い、将来、お小言。
そんなものがギュウギュウ、鮨詰めにされている。
ねえ、土管さん。
あなた前世は、立派な海賊船の大砲だったのでしょう。
ドッカンと全部ふっ飛ばして
一緒に旅に出ましょうよ。
***
あんなこと
そんなこと
なんてことを考えていたら、
今日も日が暮れる。
秋の夕暮れは、肉じゃがの匂い。
徒歩5分のふるさと。
帰れるけれど、まだ帰らない。
***
『17時のノスタルジア』
夕焼けが、ノスタルジーを連れてくる。
切なくて、寂しくて、優しいセピア。
朝でも昼でも夜でもなく
夕方が心にしみる理由は
この道が帰り道だから。
この手がサヨナラをするから。
あの背中が、小さくなっていくから。
トワイライトが、わたしを照らす。
夕焼けが、一日の終わりを連れてくる。
***
『魔夏の刻印』
一夏の思い出。
一晩よりも短い、日暮れの関係。
魔がさしたのだとしても
一過性の熱だったとしても
きっと、冬を凍えずに過ごせる、夏になると思うから。
今は。今だけは。
***
『宵に酔う』
綺麗な夜には、極上の酔い。
酒気を孕んだ言葉は
まろやかに、うろんに零れる。
赤い嘘。白い嘘。シュワシュワな嘘。
嘘みたいに、嘘が似合う夜だった。
嘘しか赦されない、夜だった。
良い嘘だから、悪酔いはしないでしょう。
明日には何も、残らないでしょう。
なんて、ひどい人。
***
『大多数の変わり者』
水は冷たい。お湯は熱い。
目が二つ。鼻一つ。
酸素が無いと、生きていけない。
こんな私でも
「人と違う」「変わっている」と言うのなら
それはあなたが
私を見つけてくれただけ。
***
『月色の夕日』
太陽が月を真似て、白く黄色く霞む頃。
夢見がちな撫子色に
優しく寂しい藤色が混ざり合う。
薄暗い、薄明るい。穏やかな靄。
夜明けのようでもあるけれど
私は朝日と夕日の見分け方を知っている。
切なくなるのが夕日で
悲しくなるのが夕日で
会いたくなるのが、朝日。
***
私の言葉が通じないなら、私は異邦人。
あなたにとっては
いつでもどこでも、異邦人。
***
『ロスタイム・メモリー』
アルバムにも絵日記にも残らない
いたずらに過ぎた時間たち。
それは優しい、ロスタイム。
失われてしまったように思えて
最初からみんなここにある。
ロストしない、ロスタイム。
大切で必要な、優しい無駄。
額縁の無い、いつもの思い出。
いっぱい、たくさん、ぜんぶ。ぜんぶ。
***
『15の夜は永遠に』
不良少女は消化不良。
社会の毒素をため込んで
シャウトで吐き出す、15の夜。
お気に入りの鉄パイプ。
ジャラジャラ鎖のシルバーアクセ。
バイクの背中、スカルのスカジャン。
排気ガス。
自由に生きたいと
型にハマった八方塞がり。
鋭く繊細な15の夜は
まだ明けない。
まだ明けない。
***
『オフライン地帯』
電波の網から逃れて、のどかなオフライン。
ここにはテレビもラジオも無いから
心の声がうるさく響く。
時間があり余っているから
やらなければならない事に追い立てられる。
人が少ないから、他人が少なくて
情報量が適切だから、誤りやすい。
どんなに大きな街より
混み合ってめまぐるしい
オフライン地帯。
***
『赤い外野』
追いかけるのは好きじゃないけれど、
追われるのも面倒で。
だから私は、鬼ごっこではいつも外野。
無益無害な赤の他人。
木の下で静かに本を読んでいる、女の子でいいの。
なんて、赤い嘘でまだ誤魔化している。
外に追いやられた、孤独な赤鬼。
***
『針の女』
針を千本飲んだ女の声は、美しい。
なぜなら千本の針は
綺麗な花の、毒の棘。
傷だらけの声は、美しい。
傷だらけの女は、美しい。
千切れた小指を指輪で繋いで
今日も女は、嘘を吐く。
その身に毒が、回るまで。
***
あなたにだけ
「お願い」だなんてずるい言葉を使うのは
私があなたの弱味なのだと
信じていたいだけ。
***
『取り残された詩』
声に捨てられた、私のことば。
文字に乗り遅れた、私のこころ。
取り残された詩が、泣いている。
悲しみの匂い、憂いの音。
ほの蒼く揺れる、詠み人知らずのうた。
聞こえるのは、遥か遠くのすぐ近く。
一億光年先のここ。一千年前の今。
私の心が、鳴いている。
***
鏡は嘘をつく。私は本当の私を知らない。
私は毎日、私の真似をして私のふりをする。
私はどこ?私は誰?
あなたの目だけが、私を見抜くというのなら
私はあなたを、見破ることにする。
***
『アウトサイダー・インコーラ』
社会・常識・ルールの枠内
シュワッと弾けるチョイ悪コーラ。
糖質・カフェイン・カロリー0で
体に優しい、精神麻薬。
刺激が足りない
満足できない
もっと甘くて、もっと強烈な
アウトサイダーで目が醒める。
***
青天の霹靂。
ありきたりな次回予告をぶっ壊せ。
奇跡のような番狂わせを
寝耳を広げて待っている。
***
『隙間の王国』
「明日天気になあれ」の占い靴。
蹴飛ばして、転がった先には見知らぬ小路。
進んでも進んでも、どこまでも小路。
そこは
どこでもない、どこにでもある、隙間の王国。
一日三食はブランチと三時のお茶。
それからアフタヌーンティー。
忙しいと忙しいの、合間の些細。
余地に夢見るトリビアル。
余白に満たされた私は
穏やかな埃になった。
***
『私がましい』
気の利いたギフトカタログは要らない。
悪趣味なスカーフが欲しい。
そうしたら
ミルのないあなたに
面倒なコーヒー豆を押し付けたい。
独断・偏見・わがまま・勝手
それが私。それがあなた。
がましさに、困らせて。
***
『昨日の人』
明日の約束より
昨日の約束を大切にする人だったから。
だから、もういいよ。
先月動物園に行ったから
明日の遊園地はやめても、いいよ。
今までが楽しかったから
これからは、もういらない。
***
『ポケッタブル・クリスマス』
ジングルベルが聞こえる。
クリスマスソングが聞こえる。
サンタクロースがやってくる。
大きなツリー。ピカピカ星。
光の粒が、しんしんキラキラ降り積もる。
雪がやんだら逆さまに
もう一度、やり直し。
忙しい時、悲しい時、寂しい時
いつでもどこでも、クリスマス。
スノードーム・クリスマス。
手の平サイズの可愛い聖夜を、心の中に。
***
『空っぽの不幸』
孤独は美しく
悲しい言葉は絵になるから
私はいつも、憂いていた。
都会の夜景を悪にして
わざわざ星を探したり。
相手のいない、悲恋をしたり。
テレビのチャンネルを回せば
笑いの一つでも得られるのに、
純文学の涙の香りに浸っていた。
そういう風に生きていたいだけなのに
そういう風にしか生きられないのだと
また今日も、悲劇ぶる。
空っぽの、悲劇のヒロイン。
***
『Re:』
暗がりに
カチカチ灯る[Re:]
数日ぶりの返信
なのに、私ばかり急かされる。
不通気味のFrom.you
不明がちのFrom.you
気まぐれで、わがままで、寂しがり屋
そんなあなたを無視できなくて
自分を無視した、24時間。
文字数を比べる様な
そんな関係は、もうまっぴら。