『ホワイト・クリスタル』
冬の空に息を吐きかけたら、
キラキラ白く輝いていた。
積もり積もった心は、
その一つ一つが
雪の結晶みたいに繊細で、
扱いが難しい。
おそるおそる言葉にしてみると
柔らかな陽光に、
解けるように溶けていった。
透き通るような、冬の日。
***
どんなに強い風にも、
決して折れることのないしなやかさ。
これからの私は、たおやかに生きていくの。
もう一人で、大丈夫。
一人に、しておいてください。
***
『救いなき愛』
あなたが神様であったなら、どれだけ良いでしょうか。
あなたの理想の中で私は生き続け、
いつか迎えられるその時まで
愛と祝福を賜るのです。
あなたは遥か天上の遠い存在として
ただただ、私の幸いとなるのです。
で、あるならば、
些細な存在の私が
これ以上あなたを傷つけることも無いでしょう。
あなたが私に抱く愛の形は、憐れみ。
私はといえば、ただ世界のどこかに
あなたの存在を感じていられれば良いのです。
ああ、どうか
この救いなき愛に福音をもたらして下さい。
***
信じることは簡単だ。
神様のように崇め讃えて、心酔して、
御心に沿えばいい。
疑うことは難しい。
理想に夢見て、
膨らむ期待を抑えて、
裏切りに怯え続けなくてはならないのだ。
***
自分より可哀想な人の数が
幸せの基準だなんて。
ああ なんて私は可哀想なの。
***
『副都心』
何でもあって、何にもない。
自由で、不自由。
そんな街、副都心。
今夜も私は、途方に暮れる。
***
にらめっこしましょう。
笑わせることが目的じゃない。
堂々とガンを飛ばすための、口実。
ほら、あっぷっぷ。
***
欲しくもないぬいぐるみを
すごく欲しいとねだった。
ワガママな恋人になってみたかっただけ。
ワガママが許される関係に、
見られたかっただけ。
***
『信号機』
赤で待機。
黄色で立ち止まり、
青で立ち往生。
***
不器用 鈍感 不愛想!
思い通りにならないあなたに
自分勝手な非難を浴びせた。
でも、本当は知っているの。
器用で鋭敏で愛想の良い、あなたのこと。
あなたにとって
私がどうでもいい女の子だってことを、
ただ認めたくないだけ。
***
『昨日の私』
常に私の陰に寄り添い、
僅かな隙を、狙ってる。
勝っても誇れず
負けたら明日から、言い訳ばかりの人生だ。
昨日の私は今日の敵。
最強最悪の 好敵手。
***
『狐狗狸さんは語らない』
ただ黙ってそれらしい表情を浮かべていれば
誰もが自分勝手に解釈し、納得する。
何でも知っている万能な神だと、
自らの心を映しただけの
ただの鏡を称賛するのだ。
10円ごときで誰が語ってやるものか。
丸でもなく四角でもなく、三角でもないもの。
どこにもない、誰も持っていない。
そんなものが 欲しいのです。
***
『私だけのわたし』
皆がみんな、まるで私のことを知り尽くしているかのような顔で、
私の名前を好き勝手に呼ぶの。
だから私、昨晩、こっそりベッドの中で
秘密の名前を考えたわ。
私だけの私。誰も知らない私。
誰にも、見せてあげないわ。
***
自己否定からの自己防衛。
自己陶酔の、自己暗示。
自己満足に浸って
自己管理を放棄して
招いた結果は、自己責任。
はい、ここで自己紹介です。
私は誰でしょう?
こだわればこだわるほど、
私が私じゃなくなっていく。
私は私になりたかっただけなのに。
ああ、自己矛盾。
***
私、百獣の王になるわ。
そうすれば、
一人で居たって的外れな同情をされなくて済むでしょうから。
***
『Ms smoking』
都合の悪いことは全部、煙に巻いて。
ああ、いつの間にか私も
あんなに嫌っていた、ずるい大人。
***
『雨降る街』
降水確率80%超えの日。
鈍色の空から滴が落ちた途端、
地上にはパッと、傘が咲く。
花柄。ストライプ。水玉模様。
賑やかな見た目とは裏腹に、
少女たちは寡黙になる。
雨が傘を打つ音で聞こえないからと、
花びらに閉じこもるのだ。
傘の中は、一人ひとりの独立国家。
雨の日は、一時的な鎖国日和。
***
濡れることは好きだけど、錆び付いてしまうのが少し、怖いの。
***
『微熱日』
37度の微熱日。
自宅を出るまで30分。
ここが、運命の分かれ道。
頭痛。吐き気。咳、鼻水。めまい。
気のせいと言ってしまえばそれまでの、
些細で微小な症状を並べ立てた。
病名は、50%仮病です。
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『惰性的な眠り姫』
生きているように起きているよりは、
死んでいるように眠っている方が、
いくらかはマシ。
***
茨の森は
寝ている間は守ってくれるけれど、
目覚めてそこから歩き出そうとすると
途端に牙をむく。
***
恋をしている自分が嫌いだ。
どうしてあの人のことなんかを考えるのに、
一日に数時間も費やさなければならないのか。
賢く生きるために、
あの人を嫌いになる理由を考えてみた。
そうして今日も、
あの人のせいで、また日が暮れる。
***
捨てる神あれば拾う神あり。
臆病なあなたが捨てた恋心を
リサイクルしてあげましょう。
地球のために!
***
『初恋ブランディング』
2月14日。
先輩、後輩、放課後、制服。
そんな、流行り廃りの無いブランドに、
何度も何度も、初恋をする。
***
フードをかぶって、チャックを閉める。
そうすると、少しだけ、
世界の音が遠く感じられる。
少しだけ、自分を近くに感じられるのだ。
***
『不思議』
空が青いのはどうして?
宇宙はどこまで続いているの?
夕方に切なくなるのはなぜ?
生きているってなあに?
世界に満ちた、たくさんの不思議。
どうか、不思議のままでいてね。
その方が、とっても素敵だから。
***
男が羨ましい。
泣かない男は格好いいし、
男泣きも格好いい。
けれど女は
泣けばずるいし、
泣かなければ冷たいのだ。
***
『怪物』
あゝ、僕の中の怪物様は、
いつの間に、そんなに大きくなっていたのだろうか。
傲慢で、恥知らずで、厚かましく、図々しい。
もうじき、僕の中におさまりきらなくなるに違いない。
そうしたら、ハラワタを食い破って出てくるのだろう。
どうか、その時は、
食べ残しのないよう、綺麗に平らげてくれ。
***
世界はお菓子くなってしまいました。
不思議と理不尽の、5:5のラテ。
役に立たない時計の針でかき混ぜて。
お砂糖は、お好みでどうぞ。
***
『うさぎ』
恋する女の子はうさぎに似ている。
ピョンピョン跳ねて、ふわふわで、
黒目がちで、とっても臆病。
そして、寂しくても死んだりしない。