『credits roll』

エンドロールが流れる。

私はまだ終わりたくないのに
無慈悲な文字の羅列は、
上へ上へと流れていく。

待って 待って
まだ まだ終わらないで。

こんな筈じゃない。
こんな筈じゃ 無かったのに。

最後に流れるのは、あなたの名前。

画面の向こうでご満悦な

私の監督様。



***



『赤ずきん』

森のおばあさんのお家へ、お見舞いへ。
赤い頭巾を被った女の子の義務よね。

美味しいブドウ酒と、
道で詰んだ可愛いお花を持って行かなくちゃ。

それから、今夜は精が付くように、
狼鍋を振る舞ってあげるつもりよ。



***



『ひみつのこい』

秘密の恋は、
未必の故意。

内緒内緒は、甘い蜜。
私の中に流れる、緋色の蜜。



***



街があまりにも明るすぎて、
月も星も、明日も見えやしない。



***



『Tokyo story』

都会に突き刺さる、赤い塔。
仰々しい名前の割に、
近くで見ると低くて地味である。

宇宙には遥か及ばず、
空にもほど遠い。
ならば何を目指したのか。

それは人間の顕示欲が具現化した
虚しい333mの鉄の塊。

なのに、この国の中心で、
今日も多くの人の物語に登場し続けるのだ。



***



「君は強いね」って
そうさせているのは、あなたでしょう。



***



恋愛小説のヒロインで無くて良かったと、思う。
お陰で、彼とは異母兄弟でもないし、
完璧超人なライバルも現れないのだから。

でもあなたばかり、
ヒーローみたいにカッコ良い。



***



ほっぺたが落ちそうな甘い言葉に、
ボトリ。

心臓が抜け落ちた。



***



一番の見せ場、盛り上がり所。
そのためだけに、
付け足されたような冒頭からの今まででした。



***



自分を失くして
笑顔を失くして
愛を失くしたのです。



***



週末の待ち合わせは、時計塔で。

例え明日が、終末でも。
約束を破ったりしたら、許さないから。



***



『鏡』

そっくりだけど、違う。
違うけど、同じ。
私を騙す、あべこべ世界。

目をつけられたら、さいご。
あっという間に成り変わられる。

ただし支障はないのです。
なにせ、そっくりなのですから。



***



メリー・クリスマス。
いつかきっとの約束より、
今、ニットの帽子をくれる方が良い。



***



『平日夜のシンデレラ』

8両編成のカボチャの馬車が来る時間です。
もう帰ります。

脱げやすい様に大き目の靴を履いてきました。
落としても割れないように、
ガラス製ではありませんので安心してください。
後日、ちゃんと届けて下さいね。

ただし、平日夜のOLの脚は浮腫みがちなので、
サイズの確認は同じ時間帯にして下さい。

それでは、さようなら。



***



クリスマス。クリスマス・イブ。
クリスマス・イブイブ。クリスマス・イブイブイブ。
1年中、クリスマス。



***



『魔法にかけられて』

あなたは王子様じゃなくて、魔法使い。
私を魔法にかけてくれるの。

平日19時、ロマンスタイム。

きらめき。ときめき。

綿あめに、シャンパンをかけたみたいな夜です。



***



『初恋メデューサ』

会いたい、会いたくなかった人。

邂逅一番、

石になった。



***



『アシンメトリー』

左右非対称
アンバランス
不整合

女の左側に住むという、魔物の仕業。



***



『冬籠り』

コートに、帽子に、マフラーに、マスク。
ポケットの中に手を入れて、
前かがみになって視線を落として。

冬は殻に篭りがちで、
みんな、みんな、
とても遠い。



***



『きっと明日、また明日』

突然今までの全てが
嘘みたいに感じることがある。 嘘だったらいいと、思うこともある。

けれども、されども、ケ・セラセラ!
結局全部、自分次第。

昨日はやり直せなくても、
明日、やり直せばいい。

私史上最高の明日に、会いに行こう!



***



お気に入りのドラマの再放送とか
ちょっとお高い缶入りの紅茶葉とか
そういったものが一つでもあるから、
今日を過ごせる。

明日を待てるんだ。



***



『いちごガール』

赤くて、小さくて、甘くて、ちょっと酸っぱい。
いちごの国の女の子。
大人になりきれない、夢見がちなお姫様(自称)。

大好きだから、最後までとっておいたんでしょう?



***



『冬芽』

ここで冬眠することにしました。
土の優しい温もりに包まれて、
心穏やかに冬を越します。
春にまた、逢いましょう。

掘り起こさないで。
私はあなたのタイムカプセルじゃないのよ。



***



『迷子の森』

ずっと一人っ子のフリをしてきたけれど。
実を言うと、
一人で逃げ出したずるいグレーテル。

今日も一本道で、迷子の予行練習。
そろそろ、森の魔女に会いに行きます。

その時は是非、
意気地なしの私のパンクズを食べに来て下さいね。



***



『哲学のたまご』

鶏が先か卵が先か。
いいえ、実は、
卵かけごはんがハジマリなのです。



***



『寡黙な口下手』

対話はややこしい。
表情や声色、複雑な要素が絡み合った、
非効率的な伝達手法である。

対して、文字言語の何と美しい事か。
不変で、正しく、明解なのだ。



***



嫌いじゃないわ。自意識過剰ね。
あなたのことなんて、どうでもいいの。



***



内緒のお話は、コズミックファンタジーな未来論。
大きなコンペイトウが、全てを終わらせるの。



***



『Devil』

悪魔は紛れる。
日常に、人込みに、平然と紛れる。

そして、その身を餓えと退屈に悶えさせ、
息をするように毒を吐き、
愛想の代わりに不幸を振りまく。

その正体に気が付く者は殆ど居ない。
悪魔は、己の正体を隠す秘訣を知り得ているのだ。

それは

決して人間のフリをしないことであるという。



***



『東京サスペンス通り』

行きかうドラマ。
被害者と加害者と、傍観者の街。

よくある二時間サスペンスにも及ばない内容なのに、
80年以上も続くみたいよ。

うんざりしちゃうわね。
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