Act9.「アンダンテ」



「はじめまして」
「はじめまして」
という橙との朝のやり取りも繰り返し繰り返し、今日で四回目だ。この街に来てから五日目の夕空は、いつもより一層赤かった。
毎“朝”は試すように「はじめまして」と声を掛け、橙はそれに彼女の期待と違うものを返す。は、いっそのこと夜に眠らせなければ彼女の記憶は失われないのではないだろうか、等と考え始めていたが、恐らくそんな簡単な話ではないだろう。

三日前のあの晩、花篝の下で何かを悔いるように『もう一回』と呟いた彼女は、その後何事も無かったかのように花の道を帰っていった。後を追って声を掛けてみれば「あら、さっきまで寝てたのに、お散歩かしら?」と、言う。その時の彼女の様子からは、本当に“何も無かった”としか思えなかった。

結局、その日の翌日の朝食に林檎は出てこなかった。次の日の夕食には次の日の朝の林檎が、また次の日には次の日の林檎が出てくる。寝過ごした夜の最初の林檎は、どこへ消えてしまったのだろうか……?
には、この街の異常の原因が橙であるという直感的な確信があった。しかし、だからと言って何が出来るわけでもない。自身も周りと同じように、同じ事を繰り返すだけだ。一度組み込まれてしまえば歯車の一つでしかない。何も進まない。何も変わらない。

いっそのこと橙に全て打ち明けてみたら何か変わるかもしれない、と思い立ったのが昨日だったが、いち早くそのことを察したユリウスにことごとく彼女との接触を邪魔されてしまった。もう分かりきっていたが、彼は味方ではない。
……急ぐべきなのだろう。時間は、無い筈だ。例えこの街の中で時間が進まなくとも、外の世界は刻一刻と終焉へ向かっているのだ。―――全てが止まっていたのなら、問題は無かったのに。

「行ってきます」
と、言ったけれど、熱心にハンマードリルを扱う彼女は気付いていないに違いない。午前11時、は他にすることもなく、前の日と同じように街へと出るのだ。パターン化された自身の行動に嫌気がさすが、他にすることも無いから仕方がない。
は何でも良いから変化が欲しくなって、スキップで街まで行くことにした。―――いや、やっぱり止めた……。



アウグスの街は、今日も今日とて祭りの準備で賑わっている。は特にすることもしたいことも見当たらず、行ったり来たり行ったり行ったりしながら、見慣れた顔ぶれが通り過ぎていくのを横目で見ていた。彼らはもう、最初のような目でを見はしない。何回かこの街とこの日を共にしたは既に、彼らにとって部外者ではないのだ。受け入れてもらうというのはそれがどういう状況であれ、悪い気はしない。

ガシャン!

あたりに響く“食器”の割れる音に、は溜息を吐いた。

「メイシャさん……」
今日も今日とて、彼女の店には溢れんばかりの客の姿がある。否、実際には溢れている。付近に他に軽食の嗜める喫茶店が見当たらない所為だろう。この数日間の様子から、彼女にとっては繁盛するのが必ずしも良いことだとは言えないのではないかと、は思い始めていた。
喜ばしいことも適度ならばいいが、何事にも限度というものがあるだろう。見た限りでは一人で店を切り盛りしている彼女が、対応しきれない客を迎え入れるなど、自暴自棄になっているとしか思えない。彼女はせめて、あともう一人だけでも良いから誰かを雇い入れ、自分は厨房で調理に専念すべきなのだ。注文を取って出来上がったものを届けるだけならば、そんなに難しいことでもない。極端に要領が悪くなければ、誰にだって出来る仕事じゃないか。

……そう、誰にだって出来る。

は店の方へと歩き出した。



「コーヒーとキッシュ、お待たせいたしました!」
笑顔を浮かべ、テーブルに注文の品を置く。置いた品物と、声に出した品名、そして客の表情から注文内容との合致を確認したは、次のテーブルへと向かった。片方の腕に二つのトレーを乗せ、客席と客席の間を縫うように歩く。……結局、見ているだけというのには、我慢がならなかった。店に入って「エプロンを貸してください」と言った時のメイシャの驚きに満ちた顔は、中々面白く暫く忘れられそうに無い。

「いらっしゃいませ、空いている席へどうぞ!ご注文がお決まりでしたらお呼び下さい」
は額に滲む汗と一向に遠のかない客足に、何故か心が充足するのを感じていた。普段からバイトで接客をしていたが、あんなに面倒だと思っていたことも、暫く無かったことで恋しくなったとでもいうのだろうか。
しかし、仕事にここまでやりがいを感じたのは初めてだった。

この店は今までろくに客が来なかったのだろう。まず、システムが確立していなかった。客の来店から注文の承り、商品のお届けとお会計。その一連の流れが定まっていない。そこで、まず一つのパターンに決めることにする。そして作業数を減らすために、注文の承りと会計を一緒にしてしまう。商品の提供前の支払い。ファーストフード店によくある形式だ。
次には、客席に番号を付けた。全ての客の居場所など把握できやしないのだから、彼らにはそれぞれ一つの番号に収まってもらうしかない。食事を届けるときもそれに従えばいい。

この二つを取り入れるだけで、店がより店らしく感じられた。勝手な真似をし過ぎているという自覚はあるのだが、メイシャがキラキラとした目で「任せた」と言うので、問題はないだろう。
客の流れも随分と良くなってはいたが、それでもまだ待ち時間の長さに苛々する客はちらほらと見受けられる。更に、こちらに落ち度の無い妙な言いがかりを付ける柄の悪い輩まで湧いて出る。

「ちょっとお姉さん!このカレーに……」
「素敵なオオクワガタですね」
間髪入れずにがそう返す。少年が指差しているのはカレーのルーに足を浸けた大きな虫で、店に小さなどよめきが起こった。その少年には見覚えがある。この付近ではちょっと有名な、いわゆる悪餓鬼だ。この少年は“毎回”カレーに虫が入っていたから代金を返金しろとのたまうのだ。
しかしは、その対処法を既に用意している。

「恐れ入りますが、当店はペット同伴禁止ですよ。……今回だけですからね?」
はあらかじめカウンターに用意していた、林檎の欠片入りの瓶を手に取る。そして丁寧にクワガタを掴み、そっとそこに入れてやった。

「クワガタはカレーは食べません。ですが林檎だけでは水分不足になりますから、おうちに帰ったら専用のゼリーをあげてくださいね。こんなに立派なオオクワガタは珍しいですから、お大事に」
瓶を渡された少年は、自分が何をしたのかも忘れて素直に頷いていた。

周りからクスクスとささやかな笑いが零れたのを聞いて、はほっとする。皆もこの少年の自作自演だということは分かっていたのだろう。少年が恥ずかしそうに頭を掻く。客席に流れる空気が、少しずつ店に優しいものに変わっていくのを感じ始めたときだった。

「………、」
「そこは、何してるのって訊いた方が良いよ」
テラス席の横の道で立ち止まって、訝しげにを見ているピーターに、は営業的なスマイルを向けた。と、調子に乗ったは思い付いたことをそのまま口にする。

「ねえ、あなたは何か、料理とか出来たりしない?」
その言葉は、うっかり飛び出たものだった。言葉を紡いでいる最中には既に後悔していたし、きっと返事は返ってこないと予想し、呆れた顔で彼が去って行ってしまうところまで想像していた。だから、彼の反応は意外だった。

「できたら、何」
「……厨房を手伝ってほしいの。お願い。手が足りていなくて」

は少し考えれば、彼が自分の願いなど承諾する訳がないということに気付けた筈だった。きっと店の熱気に頭がやられてしまっていたのだろう。
しかし、まさかは起こるものだ。彼も何かに頭がやられていたのだろうか。嫌そうな顔をしつつも、何も言わず素直に厨房へ入っていく。

「……何事?」
は自分で頼んでおきながら、そう言わずにはいられなかった。

彼が厨房に消えてから、はようやく冷静になる。厨房のメイシャも先程からずっと調理の手が欲しいと言っていたから、これは喜ぶべきことなのだろう。ただ、人選を間違えたかもしれないという不安は残っている。そもそも彼は料理など面倒だと言ってやってこなかったのではないだろうか?そう。彼は、決して料理ができるとは言わなかった。

しかしそんなの心配を他所に、料理が出てくる速度は確実に上がった。厨房と客席の往復で忙しいには、調理場の様子が中々伝わってこないが、時々メニューのレシピを説明するメイシャの声が聞こえていた。ふと、その声が自分を呼んでいることに気が付いては足を止める。そこにはメイシャの、充実した笑顔があった。

「お客様に届けて欲しいものがあるの。彼の提案なんだけれど―――」
メイシャは後ろのピーターに一度視線を移し、またの方を見て話し始めた。
この店は小さな店の割に豊富なメニューと偏らない注文の所為で、食事は作り置くことなど出来ず、しかし一から作っていたのでは客は待ちきれない。ならばその間にサービスとして何か一品でも出すことが出来れば不満は減るのではないか、というのがピーターの提案らしい。それを聞いて、が目を丸くする。

「本当に……何事?」
「何が。君が手伝えって言ったんでしょ」
の言葉に、今まで背中を向けていたピーターが振り返る。その手には鍋が掴まれており、中には卵色のシフォンケーキが詰まっていた。皿の上でひっくり返されたそれは、彼の手によって目の前で次々に切り分けられていく。流れるような手際の良さに、は呆気にとられた。片手でパスタを皿に盛っているメイシャが、その出来栄えに感嘆の声を上げる。

「美味しそう!一欠けら貰うわよ!」
メイシャがすかさず零れた欠片を拾い、ひとつ、口に入れる。彼女の口の中で、きめ細やかな生地が、しゅわっと音を立てた。舌の上に、卵の優しい甘みが広がっていく。

「とんでもなく美味しいわ!」
「知ってる」
メイシャの賞賛に、彼は当たり前だと言わんばかりだ。その様子に、は「なるほど」と思う。彼は意外にも、料理好きに違いない。そうと分かれば、引き受けてくれたのにも納得がいく……だろうか。
柔らかい黄色と素朴な香りに気を取られそうになっただが、ハッとして、思い出したように客席の方へケーキを運んでいった。お昼時はもう終わる頃だというのに、一向に客の数は減らない。だがこのケーキがあるなら、乗り切れるだろう。当然だが、ピーターのシフォンケーキは大好評だった。
は、自分も一口食べてみれば良かったかな、と時々後悔しながら、狭い店内をくるくると回り続けた。何かを強く食べたいと思うことは、久しぶりのような気がしていた。

彼女が回って、客が回って、時計の針が回る。注文の内容は次第に軽いものへ。やがて客の数もまばらになり午後18時になると、名残惜しそうにする客の「ごちそうさま」を聞いてから、店を閉めた。は客の居なくなった店内を見回して、満足げに微笑む。ああ、良い仕事をした!!

さん、お疲れ様」
労いの言葉とともに、メイシャはにグラスを差し出した。は礼を言って、それを受け取る。グラスはよく冷えており、中ではルビー色の液体が揺れていた。甘酸っぱい香りのそれは、ハイビスカスティーだ。
メイシャが自身の分のグラスを持って席についたのを確認してから、も椅子に腰を下ろす。カラン、カランと、氷が硝子のコップにぶつかって立てる涼しげな音が、体の内に残る熱気を冷やした。爽やかな酸味は、疲れを癒してくれる。

「本当に、色々と勝手なことをしてしまって、すみません」
「とんでもない!私、もう大助かりしちゃったわ。この店、死んだ叔父が経営していたものを継いだのだけれど……一人じゃ全然駄目でね。今日は、夢にも見なかったぐらいお客さんがたくさん来たものだから……もう慌てちゃって。さんが来てくれなかったらどうなっていたことか」
はそんなメイシャに、心の内で答えた。その場合あなたは回らない店に困り果てて、本来の閉店時間の18時よりも大分早い14時には店を閉めてしまうのですよ、と。

「……あれ?あの人は?」
「ああ、シフォンケーキの彼ね?ちょうど今、裏口から帰ったところよ」
「……えっ!帰ったんですか!?」
メイシャは頷いた。本当に今さっきの出来事だったらしい。

(追いかければまだ間に合うだろうか?)
は乾ききった喉に冷たいハイビスカスティーを勢い良く流し込むと、エプロンを脱いで立ち上がった。

「ご馳走様です!とっても美味しかったです。あと、エプロンをお返しします!」
「あら?あなたも帰るの?」
はい!と元気良く返事をして、畳んだエプロンを返すのその手を、メイシャが掴んだ。

「メイシャさん?」
「いえ、ね。彼には御礼もさせてもらえなかったものだから、あなたにはちゃんとしておきたいのよ」
そう言っての手に紙幣を握らせるメイシャに、は困った顔で首を横に振った。今日一日でこの国の金銭価値は大体分かったが、手の中にあるのはとても軽く受け取れる金額ではなかった。

「……駄目ですよ、こんなに貰えません。わたしが勝手にした事ですし」
「あら。自分を安い女にしちゃ駄目よ?あなたの働きには十分お金を払うだけの価値があったんだから。貰ってくれないと困るのは私なの」
そう言われたら、受け取らない訳にはいかない。は照れくさそうにその給金を受け取ると、丁寧にポケットの中にしまった。この世界で初めて自分で稼いだお金だ。達成感と嬉しさがこみ上げ、胸の辺りが温かくなるのを感じた。

「有難うございます。それでは、また!」
「ええ!本当にお疲れ様!ウサギさんにもよろしく言っておいてね!」
別れを告げたは、駆け出す。しかし、少し行ったところで名残惜しさを感じて振り返った。

小さな店の前では、そばかすだらけの顔に眩しい笑顔を浮かべた女性が、誇らしげに立っていた。



人もまばらになった往来で、はピーターに追いつこうと走っていた。メイシャの言うように今さっき店を出たのだとしても、彼とは脚のリーチが違う。こうでもしないと距離は縮まらないだろう。
三つ目の角を曲がったところでようやく目立つ彼を見つけて、はその隣にゴールした。

「待ってよ、帰るの早いよ」
「別にいつ帰ろうと僕の勝手でしょ」
「そうだけど」
彼のぶっきらぼうな言葉にも、は不思議と苛々しなかった。達成感と満足感で、気分が良かったのだ。

「今日はありがとう。メイシャさんも感謝してたよ」
「君達に喜ばれる為にした訳じゃないよ」
「料理、好きなの?」
「………だから、なに」
は、彼がキッチンを使うところは見た事が無かった。毎回の食事は橙が準備をしていた為、少なくともこの街に来てからは料理などしていなかったのではないだろうか。だとすれば、機会を与えられて、久しぶりに料理がしたくなったのだろう。は微笑む。

「それにしても、あなたがお鍋で作ったあのシフォンケーキ!とっても好評だったよ。わたしも食べてみればよかった」
「もう作らないよ」
「……うん。わたしも、今日だけで満足かな」
のその言葉は、今日一日の自身の行いに対するものだろう。溜息を吐いて空を仰いだを、ピーターが怪訝な顔で見た。

「結局、君は何がしたかったの。明日も今日じゃないか。61年続いてきたことに、たった一回だけ、何が出来たの」
「明日を変えたかったんだよ。紛れも無い、革命だったでしょ?」
は笑った。そして、街を抱くように両手を広げる。

「この街は同じ日を繰り返してはいるけれど、それは巻き戻してまた再生、なんて単純なものじゃないよね。メイシャさんだって、お客さんの来なさそうなあんな小さな店に、あれだけたくさんの食材を置いてさ!それって、オリジナルの17月10日には無かったことなんじゃないかなって思って。一見わからないけど、皆、確実に進んでるんだよ。だからさ、部外者のわたしが今までには考えられないような大きな変化を起こしたら、どこまで明日が変わるのか、気になったんだよね」
「―――それくらいは、君にも気付けたんだね」
そう言った彼の様子からは、馬鹿にしているのか、それとも少しは認めてもらえたのか、どちらなのか分かりかねた。は咳払いをする。

「それくらいだけは、ね。でも、気になることが一つ。何度も何度もあの店には同じお客さんが来て、お金を払ってくでしょ?そのお金はひたすらに店に溜まっていくの?それともまた彼らの手元に戻っていくの?わたし、御礼貰っちゃったんだけど……」
「……この街のループは、原子レベルでの17月10日の再現によって成っているものだから―――分かる?」
「ちょっとね」
つまりそれは、人だけではなく、食材も金すらも、全てが演技をしているということだろう。皆が皆、事の首謀者の為に同じ事を繰り返し続ける。しかし、彼らにとって全くの異分子であるが受け取った分がどうなるかは―――まあ、明日になれば分かることだ。

薄暗い道に二つの影が伸びているのを見て、は子供の頃の遊びを思い出して懐かしくなった。

(影踏みをすれば、わたしの方が有利ね)

「何、笑ってるの」
「別に」

空を見上げると、急速に夜が訪れていた。はその巡りに寂しさを覚える。昼か夜、どちらかしか訪れないのだとしたら、自分はどちらを選ぶだろう。爽やかで明るい昼間の青空。静けさと星の煌きをもたらす夜の空。恐らく、どちらかを選ぶことなど出来ない。

「ね、あなたは、昼の空を見たことが無いの?」
はピーターに問い掛けた。普通に考えて、61年よりももっと前から夜と夕方しかない状況が続いているのだから、そんな昔に彼が生まれている訳もない。我ながら愚問だったか、と思うに、彼は予想外の答えを返した。

「まさか。昼がなくなったのは、つい最近のことだよ」
「……だって、この街は61年前から昼が無いんでしょ?それとも、実はあなたは凄く長寿な種族で、何十年かそこらの出来事は“最近”でしかないってこと?」
最後のは、ほんの冗談のつもりだった。けれど全然面白くなかったのは、そんな風に無視されなくとも当の本人が一番良く知っていた。

「“独自の時間軸”。前に言わなかった?この街の時間は、外の世界の時間とは切り離された別のものなんだよ」
「……つまり、分かりやすく言うと?」
「今、言ったんだけど」
それでもは納得がいかない顔で、じっと彼を見ていた。やがてピーターはやれやれと肩を竦める。

「君の世界での時間がどういうものだったのかは知らないけど、この世界の時間についての定義が知りたいなら、図書館にでも行けば良いよ。この街にもあるから」
ほら、と彼が見やった先には、オレンジ色の建物がある。この間本を落とした青年が言っていた、大図書館だ。

「そうしよう、かな。明日にでも、行ってみよう」
のその言葉に、ピーターが返事をすることはなかった。
それからの道は一つの会話も無かったのに、互いにやけにのんびりと歩いていたようだった。気付けば辺りは、完全に夜闇に包まれていた。



*



翌朝、目を覚まして屋根裏部屋から降りたは、いつものように廊下で橙と鉢合わせる。はとっさの思いつきで、今までとは違う挨拶を試みた。

「橙、おはよう」


「あら、。おはよう」


「………え?」


いつだってそうだ。物語は急速に、予想外の展開をみせる。
それは読者を驚かせるために用意された架空の世界の出来事のようでありながら、どこまでも身勝手な現実だった。
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